コロナ対策に必要なのは、迅速な情報共有と厳格なデータ・セキュリティーだ
日本政府が感染症対策の新組織設置を模索している。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55984550S0A220C2EA3000/
先行事例として有力なのは、感染症対応で「世界最強」とされるCDC米国疾病管理センター(年間予算8千億円、職員約1万4千人)だ。この日本経済新聞の記事では、わが国の予算65億円、研究者308人と比較して、日本の国立感染症研究所が「司令塔機能を求めるのは難しい」としている。しかし、この認識には重大な誤りがあると思われる。予算や人数の比較で進める限り、官僚組織の肥大化が進み、ますます混乱することになりかねない。予算や人数よりも注目されるべきは、迅速な情報共有と厳格なデータ・セキュリティを実現している内部のシステムなのだ。米国CDCが成功事例とされるのは、内部システムの有効性であり、「世界最強」クラスの民間企業との協働で作り上げたからこそ成功しているといって過言ではない。
米国CDCは第二次世界大戦のマラリア対策の後継として1946年に設立されているが、2011年以来、シリコンバレー民間セクターのパートナーと協力して感染拡大(アウトブレイク)調査を合理化し調整するためのウエブベースのシステム: SECRIC: System for Enteric Disease Response, Investigation, and Coordinationを開発している。https://www.cdc.gov/foodsafety/outbreaks/pdfs/SEDRIC-factsheet.pdf
この情報プラットフォームは、何重にも防護され、外部の監査が行われ、厳重に管理されたデータ・セキュリティの下、地元保健所、自治体、病院、検査機関、国立感染症研究所、厚生労働省、そして政府がリアル・タイムで正しい情報を共有し、ワクチン開発に必要な情報を供与し、事実に基づいた意思決定を可能にしている。
感染拡大(アウトブレイク)がどんな人口構成でいつ起きているのかを、研究所のデータと共に表示する”Outbreak Dashboards”を持ち、これを時系列で地図上に表示し、濃厚接触の複雑なデータをダイアグラム表示して感染元のポイントを確定し、感染被害を受けた方のウィルスへの暴露、健康状態、医療機関、研究機関の情報をリスト化し、権限を与えられた人間が編集可能とすることで、迅速かつ適切な決断を可能にしている。
今回のコロナウィルスのように、まだ未知の部分が多く、危険を特定し難い感染拡大(アウトブレイク)に対して、こうした知見は必須のものと思われる。同時に、このような個人情報が絶対に秘匿されるためにも、何重にも防護され、米国FBI やCIAなどでも活用されてきた民間の知見を一刻も早く有効利用すべきだろう。