法治国家の危機:検察庁法改正法案に反対する

Tadashi Inuzuka
3 min readMay 10, 2020

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この権力は腐敗している。2012年衆議院選挙以来8年間にわたって国会議員の三分の二の絶対多数を抱えてきた安倍政権は、絶対的に腐敗しようとしている。何としても検察庁法改正はストップさせねばならない。

日本では刑事事件の起訴・不起訴はほぼ100%検察官が決める。ひとたび起訴されたら99%以上が有罪になる。裁判所が無罪判決を出すのは例外中の例外で、仮に無罪判決を出しても即日抗告が認められる。検察にとって形勢不利であれば裁判の日程を徹底的に引き伸ばすことができる。弁護士は検察が集めた証拠を全て見ることはできず、被疑者の取り調べに立ち会うことさえ出来ない。実態として、日本の司法判断は検察が行なっているのである。この恐ろしい構造に国民のチェックを入れるには、中立・公正な報道が必要だが、刑事事件の報道は検察とマスコミの共同作業であるケースが多い。つまり、日本で検察に睨まれたらまともな仕事はできない。こんな恐ろしい刑事司法を持つ国に優秀な人材が集まるはずがない。歪んでしまった構造の改革は立法府の仕事だ。にもかかわらず、現政権の体たらくはなんだろうか。刑事司法制度改革どころか、問題に目を向けてさえいない。検察トップの定年延長を閣議決定することにどんな意味があるのか。国のあり方として定年延長が本当に必要ならば国会の場で堂々と説明すれば良い。説明できないどころか、論理が破綻している。追求されれば逃げ、ごまかし、すり替え、時間稼ぎに終始している。何を隠したいのだろうか。

そもそも検察は最高権力者に対しても睨みを効かせる機関だ。1976年ロッキード事件では時の総理大臣が訴追された。検察はそれだけの権力を持っている。そして検事総長はこの権力を統括する。海外に目を向ければ、ICC国際刑事裁判所の検事総長ベンスーダ氏が、アフガニスタンで2003年以来行われてきた戦争犯罪について、アフガニスタン政府と米軍に対する訴追を決定し、2020年5月5日に捜査開始が発表された。米ポンペオ国務大臣はこの決定を「無謀」と非難し、「どんな事態になっても米国人を守る」としてベンソーダ検事長の米入国ビザを取消し、入国を拒否して対抗している。この間の事情は、国連大学の副学長を務めたラメッシュ・タクール氏がブログで解説しているが、これを読むと世界最強の軍事力であっても恐れることなく正義の名の下にチェックし、法の支配を実現するという仕事を、検事総長個人のリスクにおいて、その職権で進めていることが分かる。

#検察庁法改正法案に抗議します、の声がTwitterで380万を超えた。この動きを加速させよう。検事総長の人事を恣意的に、時の政権の都合で決めさせてはならない。独立した立場で法の支配を見守ることができる日本の検察を、安倍政権の懐に入れさせてはならない。

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Tadashi Inuzuka
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Written by Tadashi Inuzuka

WFM-IGP Executive Committee member, Former Senator of Japan

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